そう。ここは戦場。草木が生えない、荒れた大地なのだ。乾いた土から這い出ようとする芽が、絡み、絞め、交わっていく。互いを罵り、あざ笑い、蔑む、それはすべて、町のため。町のことを思ってこそ、彼らは熱い、熱い議論を闘わせるのだ。「町の財政を知ってモノを言っているのか⁉」玄人が叫ぶ。「僕は誰よりも住人のことを1番に‼」素人も負けてはいない。熱い。わたし、伊達美沙も、高い志を胸に、ここに居る。この、戦いの場に。市長である、石田里志先生のお側で、秘書をさせて頂いているのだ。先生の選挙活動をお手伝いさせて頂き、その崇高な魂に感銘を受けた。住人のことを第1に、それでは町は成り立たない。しかし先生は、未だに初心を忘れてはおらず、今も難しいお顔で、書類を睨めつけ、なにやら書き込んでいる。住人と財政。両極端の柱に挟まれているのだ。たがきっと、先生なら、先生ほどのお力を持った人なら、新たな道を切り開くに違いない。「税金を下げることが解決にはならん⁉」玄人が切り落とせば「市の職員の給料をカットしましょう‼」素人が切り落とす。最早、議会は白熱しすぎて、今にもお互いの首を切り落とさんばかりの、異様な熱気に包まれていた。すると「サッちゃん、サッちゃん」先生が手招きする。なにか思いついたのだ‼この、押しても引いても治まりのつかない議論に終止符を打つ、打開策を先生は閃いたのだ‼私は先生のもとに駆けると、一枚のメモを渡された。町を数字で表した資料だ。その数字を組み替え、町人も職員も納得いく結果が出たに…「あの、これなんですか?」私は尋ねた。罵声が飛び交う中、少し声を大きく。すると先生は言ったのだ。


「ゆるキャラ」