姿が見えないクラスメイトからのイジメはエスカレートして、あたしはその日、古典的にもトイレの隙間から水をかけられた。


体操服にはさっき絵の具で散々に落書きされている。


こんなのが続いていたから、あたしはろくに食べ物も食べられなくなったし、何よりキツいのは眠れなくなった事。


それでも仕事には笑顔で臨みたいんだ。





昂くんとの約束、だったから……。






濡れた制服を着たまま職員室の担任の先生を訪ねた。


寒気がするし、頭が重くてズキズキする。


さすがに見かねた先生は「保健室に行ってジャージを貸して貰え」と言って、あたしの荷物を教室から持ってきてくれたけど。



……ねぇ先生。あたしのボロボロの教科書、見たんでしょ?体操服も。


なのになんで何も言わないの?

逃げるように保健室から出ていったのはどうして?





タクシーを使って家に戻った。


高橋さんには車の中で電話をかけて、「熱が出たから今日の仕事はキャンセルして」と頼んだ。



今日は雑誌の撮影だったから、穴を空けた分は明日絶対に取り戻す。



ふらふらと玄関に辿り着くと恭哉くんが家に入るところだった。




「おまっ…… !? 何した !?」



恭哉くんは驚いたようにあたしを見た。




何したって……。あたし、変かな?体操服着てるから?



「なんでそんなに顔色悪いんだよ?風邪か !? 病院は !?」

「……はは。ちょっと寝不足、かな……。寝てれば治る……」




フラフラする。身体中からざぁざぁと音がするみたいだ。




あ、倒れそう……。






そこであたしの意識は途切れた―――