「散財させやがって。俺は明日から何食っていけばいいんだよ?」

「へっへー!パレード見せてくれないって言うから、今日は我が儘言っちゃうもんね!」


あの後、ジュエリーショップの前から動かないあたしに困りはてた昂くんは、ネックレスを買ってくれた。


妖精をモチーフにした小さなダイヤがついた可愛いトップ。


ネックレスを選んでくれたのは昂くんだ。


あたしだってそこまで鬼じゃないから『キーホルダーぐらい欲しいなー』って駄々こねただけなのに、昂くんはどうしてもネックレスにするって言い張ったんだもん。


退場ゲートをくぐると、昂くんはあたしをベンチに座らせた。


「何?」

「ネックレス。つけてやるから」


ひやりとした感覚が首筋に這った。


「絶対に外すなよ」

「命令形なの?彼氏みたい」


昂くんが言えないって分かってたのに、あたしはそんな言葉を言ってしまった。



「……もし、俺が咲絢の元に戻る前に好きな奴ができたら、捨てていいよ」

「……それ、」

「俺も頑張るから。咲絢も、頑張れ」



ネックレスをつけるために後ろに回ったまま、昂くんはあたしの体を抱きすくめた。



「今日は色々話をしようと思ってたのに何も話せなかった」

「……うん……」



あたしも聞きたいことが、いっぱいあったよ。

だけど。



「……待ってて。咲絢。絶対戻ってこれるように、俺も頑張るから」

「……うんっ……」