着替えが終わっても、昂くんは戻って来ない。



あちこち探して最後に駐車場に行ったら、車の運転席で煙草を吸う昂くんをみつけた。



2年間も一緒にいたのに知らなかった。



昂くんって、煙草を吸うんだ……。



じゃなーい !!!

主演のあたしが最終日に大荷物を抱えて帰るっていうのに、手伝いもしてくれないで何サボってんのよ !?花束だけでも結構重いんだからね!



荷物を両手に持って車に近づき窓ガラスをゴンゴン叩いた。


よっぽどびっくりしたのか、昂くんが慌てて煙草を下に落としてしまう。


「ごめん!もう終わったの !?」

「どんだけ慌ててんの?無事に終了しましたよー。7時からの打ち上げに誘われたけど、どうしよう?」

「あ…ああ。少しだけ顔出せばいい。どうせ飲み屋とかだろ」

「未成年だから駄目じゃん?行きたくないから別にいいけど」

「……それより、社長が咲絢に話がある、ってさ。今から」

「えぇ !? 今からぁ?」


昂くん車から降りて、あたしが抱えてきた荷物を全部トランクに乗せてくれた。


それを見届けてからあたしも車の後部座席に乗り込む。


「昂くん、なんで最後にいてくれなかったの?」


車が動き出すと、あたしはさっきの最後の撮影に昂くんが立ち会わなかったことを責めた。