咲絢が初主演するドラマが放映される頃、俺はK大の情報マネージメント学部に進学した。



心にぽっかり空いた、でかい穴を抱えたままで。



元カノの香澄とは1年以上付き合ったが、最後は俺がフラれる形で終わってしまった。


高3の卒業式も間近に迫った寒い冬の日の出来事。



そりゃフラれもするさ。


デート中にショーウィンドーに貼られた咲絢のポスターに目を奪われたり、コンビニに行ったら咲絢が表紙の《Shelly 》を必ず手に取って立ち読みなんてしてればな。



「恭哉は、誰を見てるの?」


香澄に言われて気がついた。


咲絢と会えなくなってからの俺は、ずっと咲絢の残像しか見えてなかった。



香澄よりメディアに映る咲絢を、いつも目で追いかけていた。



だって変だろ?



昔は咲絢が俺の後を追いかけてたはずなのに、なんで今は俺の方があいつの後ろ姿を眺めているんだよ?