病院に運ばれた咲絢は、幸い軽い打撲と擦過傷だけですんだ。

だが、顔にも少し傷がついてしまったため、今日の撮影には穴を開けてしまうことになる。

病院にはスタッフが一人、そして梶社長も付き添いに来ていた。

心配そうに咲絢の頬を撫でる梶社長を見ると、殴り飛ばしたい衝動に駆られる。

その位置を替わってほしいと願う。



だけど、俺にはそんなことを言っている場合じゃない。こんな結果になってしまったのは、全部俺のせいだ。そのけじめだけはつけなきゃいけない。




咲絢に、もう二度とこんな思いをさせたくない。

二度と、こんな目には遭わせない。



徐に梶社長と咲絢に近づき、拳をきつく握り締めて口を開く。



「社長、今日はお時間は大丈夫ですか?」

「この後少し会議と決済が待ってるけど。それがどうしたんです?」

「今日はもう咲絢は仕事ができません。咲絢のこと、お願いしてもいいですか?」

「そんなことなら大丈夫。社に連れて行って、大人しくさせとくから」



……咲絢を頼めるのは、この人しかいないんだ。

俺じゃ、やっぱり無理だったんだ。

だから、俺は俺にできること…。