分かってる。


その時俺は、咲絢に、何もしてやれなかった。



いや、咲絢がそんなにツライ辛い思いをしていたことさえ知らずに、俺はただ陽菜乃に引っ搔き回されていただけで、確たる成果も挙げてはいない。

咲絢の力にすらなっていない。




それでも。



今、こうして意識を失った咲絢の傍に居たいと願うことすらも、俺には望むべきではないのだろうか?


咲絢の目が覚めるまで。

誰かの代わりでも構わない。


それしか許されないのなら。






せめて咲絢が目覚めるまでは、この手をしっかり摑まえさせていてくれよ……。