枯れ木に引っかかって止まった咲絢の体を、傷つけないように慎重に担架に乗せた。


スタッフや共演者たちも、いきなりのハプニングで現場は騒然と殺気立っている。

立ち位置の確認を怠ったのか、アシスタントは平身低頭して言い訳をしているが、今はそんなことに時間を取られている場合じゃない。


咲絢の体にもし万が一、傷でも残したら大変だ。

それは勿論商品としての如月咲絢の価値を云々なんて言うのではなく…俺が、嫌だからだ。


傷ついた咲絢を、見たくない。咲絢を、傷つけたくない。



再び咲絢のマネに返り咲いてからは、梶社長からの俺への牽制はあからさまだった。


『咲絢に、手を出すな』


梶社長からの無言の圧力は、何度も冷たい視線で俺に突き刺さった。


それだけじゃなく、直接言われたこともあった。


高校に入ってからしばらく、苛めや誹謗中傷等の辛い思いをしていた咲絢を救ったのは、他ならぬ梶社長本人だったことも。