だけど繋いだ咲絢の手は離さなかった。



この手を、離したくない。


この場所から現実に戻ってしまえば、もう俺にこの手を繋ぐ権利はない。


葛藤は胸に押さえ込んだつもりなのに、千々に乱れて呼吸すら儘ならない。



閉店間際の店が建ち並ぶメインストリートを、名残惜しげに二人並んで歩く。



その中には、かつて咲絢にネックレスを買ってやった、あの店もあった。


またここで、ペアリングでも買ってしまおうか。


咲絢の薬指に光るリングを外させて。



……出来るわけ、ないよな。



左手のリングは、咲絢が梶さんのモノだという証しなんだしな。





とうとう、パークの出口に辿り着いてしまった。


あの時座ったベンチも、記憶そのままの場所にある。



「……咲絢。座らないか……?」



それはもう、俺の願望に過ぎないかも知れない。


だけど、咲絢は黙ったまま頷いた。



あのベンチで、咲絢に誓った筈なのに。


自分自身のスキルを上げて、いつか咲絢の元に戻るから…と。



それなのに。



「昂くん、今日はありがとう。昔を思い出して……。ちょっと楽しかったよ」


儚く笑う咲絢は、あの時の咲絢のままだ。