「やだ恭哉、ここで待ってたの!?」



現マネの高橋さんには咲絢のマンションには俺が連れて帰ると電話で伝え、了承を得てから咲絢の控え室の前で待つ事15分あまり。



着替え終えた咲絢が出てきたのを捕まえた。



「……海、見に行かないか?」


さっき確認したら、咲絢の今日の仕事はこれで終わりだと言っていた。



今から行けば、夕日が沈む海ぐらいは見せられるだろう。



「海?いいの!?」


ぱあっと花開くように笑顔を見せた咲絢の手を絡めて繋いだ。



テレビ局内でこういう事をしても、今は誰もが何も言えない。



あとはあいつに、咲絢を諦めさせればいいだけだ。



それだけなのに。



何故不安が拭えない?


咲絢の為に結果を出した俺と出来なかったあいつ。



比べようがないのに、焦る気持ちは止まることを知らない。



……もう、咲絢の手を離して、後悔なんかしたくない。



だからずっと、側にいてくれよ……。



――――――咲絢。