「咲絢、撮影は終わったんだろう?着替えて来いよ。出かけるから」



現マネージャーの高橋という女性とそいつに一礼して、咲絢をその場から連れ出した。


あいつには咲絢とは話してほしくない。


そんなことを許したら、きっと咲絢が……俺の元から離れてしまうのではないかという不安が拭えない。


この前ホテルで咲絢にプロポーズした時にも、咲絢の心の中、半分はあいつの事を考えていたに違いない。



咲絢がモデルとしてデビューしてからずっと、どんな思いで俺がメディアに移る咲絢を観ていたか、誰にも分かりはしないだろう。



仕事とは言え他の男とキスしてる咲絢を、どれほど切なく想って観たかなんて。


一度は手放した咲絢の手を再び掴まえる事が出来た時の安堵を。



それほど長い時間、咲絢の事を想って今まで来た。



誰にも邪魔させはしない―――。