「……咲絢は、忘れられないヤツがいるんじゃないか?それで……」
「そんなことない!」
今、私の心を占めてるのは恭哉しかいなくて。
だから、これでいいんだよ。
恭哉の胸に抱かれてしまえば他の誰かが私を煩わせることなんて……。
……そうなのかな?
やっぱり私は、まだ昂くんのことを忘れていないんじゃないの?
だから恭哉にプロポーズされても、気持ちが揺らいで定まらないんじゃ……。
頭を振ってその考えを打ち消し、恭哉の背中に腕を回した。
恭哉は私の横に並んで堂々と歩くために、今の地位を築いてくれたんだから。
迷うことない。迷っちゃだめ。
私を離さないでよ、恭哉……――。


