「社長の許しが出た。行こう、咲絢」


恭哉は私の腰を引き寄せて密着させ、未だ蠢くパーティの会場をスマートに歩いていく。




VIP用のエレベーターに乗り、最上階まで来て振動が止まった。



冷静に考えれば、恭哉が名門ホテルの最上階、金額的にも高い部屋をとるのですら驚くことなのに。





恭哉に手を繋がれて、ベッドルームの窓辺に連れていかれた。



窓から見えるのは宝石のように妖しく光る夜の街並み。





眠らない街を眼下に見下ろすと、自分のいる場所が、まるで砂で作った城のように、儚くて脆くて……。


波が来たら、あっという間に消えてしまうんじゃないか……。そんな幻覚にも似た気分にさせられる。




これは、夢?


私が女優で、恭哉が社長。



小さい頃はこんな将来なんて考えてもいなかった。


ただいつも私の横には恭哉がいた。



いつかは恭哉と付き合いたいって、そんなことをただ漠然と願っていた。



それなのに歯車はどこからか狂いだして、今では予想もしていなかった道を歩いている。




その事実を認めるのが怖い。