「なぁ!俺腹へった!ピザ食っていい?」


月島くんが唐突にメニューを私に突き出してきた。


「お前はトールパフェな。健之と桜小路は?」


今、ちょっと落ち込んでるのにそんな気分じゃないってば。


そう言いそうになって、言い止まる。



……みんなで楽しく過ごしてる場で、そんなこと言ってどうするんだよ。



きっと、月島くんだって落ち込んだ私を見かねて、せっかく気を利かせてくれたのに。



本当、空気は読まないとダメだよね。


「ねぇ!トールパフェなんて一人で食べれるわけないじゃん!4人分って書いてあんだけど」


カラ元気でも元気だし、笑わないより笑い飛ばしてた方が気は楽になれる。


だから月島くんにはわざと噛みついた。


「花火差してもらいましょうよ。私も食べたいもの。咲絢、一緒に写真撮りましょう?」

公佳ちゃんに、にこっと笑ってこっくり頷く。


その公佳ちゃんの横では、大地くんがメニューの一点に釘付けだ。

「なにこれ。1キロポテトって。マジ1キロもポテト食えんの?じゃあ俺これ!」

「大地くん、ポテト好きなの?」


1キロなんて、食べられないよ普通は。


私はSサイズを注文してようやく食べきれるってば。


胃袋が違うのかな?




私が代表してフロントに注文するつもりで持ち上げた電話を、公佳ちゃんが取り上げた。


その顔を見れば珍しく、にひひって感じで、おおよそ公佳ちゃんには合わない笑い方だ。好きな子に悪戯を企む、女の子みたいな。



「私が注文するわ。咲絢は座ってて」


ん?公佳ちゃん、もしかして何か企んでる?