売店のお姉さんは《啄木鳥の森》を観てくれてたようで、私が買い物に来たことに感激されてサインをせがまれた。


こういう時の恥ずかしさにはまだ慣れてないんだけど。




それから駅弁を2つ買って新幹線の指定席に乗り込むと、もう先に高橋さんが席に座って私を待っていた。




「今後のスケジュールだけどね、今日はこのままオフでいいわ。明日は学校に行ってからCM撮影の打ち合わせ。……学校の方は大丈夫?」

「もう大丈夫ですよ。昨日公佳ちゃんが、取り巻きさん達には私に嫌がらせをしないように言ってくれたらしいですから。それより倉木さんとはどうなったんですか?」



それこそ私の仕事に影響することじゃないですか。


駅弁の1つを高橋さんに渡して、高橋さんの様子を伺った。


「あら……。買ってきてくれたの?ありがとう。彼…はまだ1週間ぐらい今の現場に入りっぱなしだから、まだ私達の生活基盤をどうするかは決めていないわ。彼が帰ってきたら話し合うけど」

「新しい住居が決まったら、絶対に教えて下さいね」



私は気軽な気持ちでそう言って、駅弁の蓋を開けた。けど、明るい私の声とは裏腹の高橋さんの暗い声が横槍を入れる。



「……私の事より、まずあなたの事が先でしょう?お付き合いしている先方とは話し合わなきゃいけないわ。社長に頼むからね」


なんで?

なんで社長まで出てくるの?


「……心配しなくても、『別れろ』とは言わないわよ。全ては社長の判断待ちなんだから、咲絢は心配しないで。……食べましょ?」



……忘れてたけど、恭哉については私より高橋さん達の方が詳しく知っているような口ぶりだったよね?


どうしてだろう?


私の悶々とする気持ちには関係なく、新幹線は、時間と風景を先へと導いて行った……―――。