桜色ノ恋謌

衣装を着替えて、タクシーを使ってホテルに戻った。


いつもだったら高橋さんが車で送迎してくれるんだけど、今は高橋さんの顔も見たくない。


だけど一応マネージメントに差し支えるといけないから、タクシーでホテルに帰る事だけはメールしておいた。




………その返事はまだ来ないけど。






「……つっかれたなぁ……」



シャワーも浴びずにベッドにごろんと寝転んで天井を見上げた。





公佳ちゃんの淡い恋心。


高橋さんと倉木さんの20年近く燻っていた恋心。



どれもが私を悩ませる。




恭哉の声が聞きたいよ。


今、電話しても大丈夫かな?



疲れた体を無理矢理起こし、携帯を手に恭哉の番号へ電話をかけた。







けれど、電話はいつまで経っても何回掛けても繋がらず、その夜はしくしくと痛む胃を擦りながら眠りについた―――。