桜色ノ恋謌

いくつになっても、変わらない恋心を同じ人に持ち続けているんだ……。



「……高橋さんは、倉木さんのこと、嫌いなの……?」




恐る恐る私は高橋さんの顔を見上げた。



瞬間、分かってしまった。



だって高橋さんが泣きそうな顔で顔を赤らめていたから。



「この20年、私には仕事だけしか残らなかった。私が手掛けた子達がメディアに取り上げられるのを生き甲斐にしてきた。今更……」

「私はそんな高橋さんは大嫌い。私は高橋さんと色んな話をしたかったのに。学校で苛められてた事とか、彼氏の事とか、本当は一番に高橋さんに相談したかった。けど、高橋さんはいつも自分で壁を作ってて、そんな相談なんかできなかった……」



高橋さんが私のマネージャーに就いてから今までの事を思い返すと、楽しいより辛いと思う気持ちが強すぎて、思わずうっすらと涙が浮かんでいた。


「苛められてた…って…咲絢…誰に…」


「高橋さんの雰囲気がそうさせたんだよ!倉木さんとちゃんと前向きに話をするまで、あたしは絶対に高橋さんとは話をしないから !!」




言い逃げするようにくるりと後ろを振り向き、重たい衣装を引きずり引きずりながら、私は控え室へと駆け込んだ。




高橋さんが自分の過去と向き合って、壁を取り除かない限り私は高橋さんとは絶対に喋らないんだからね!