あ……。さっき、大地くんの手を取ったのは指示通りじゃなかったから駄目だったんだ……。


でも、好きな人を前にしたら…って考えたら体が無意識に動いたんだもん。しょうがないじゃん。


「俺はいいと思ったけど」

「私も今のは良いと思いましたが。時間の編集をするほど誤差はないのでは?監督」


うそ……。



桜小路さんと大地くんが、私を庇ってくれた?


「……脚本と指示通りに動いてりゃいいんだよ。つべこべ言わずに撮り直すぞ !!」



かたくなに監督にそう言われれば反論できるわけもなく、そのシーンはまた撮り直すことになった。



無意識だったのにな。





「……おつかれさん。監督の言うことは気にすんなよ。あの監督は脚本通りに動かない役者が嫌いなんだからさ」

「大地くん……。ありがとうございます」


二度目のテイクでようやくOKをもらった私は、やっぱりかなりヘコんでた。


その日全部の撮影を終えて、私のところに来て慰めてくれたのは、なんと大地くんだった。



「……翔大がさ、最近変わってきたんだよなー。咲絢チャンのせいで」

「月島くんが、ですか?」


あいつのどこが変わったんだよ。


平常運転で女の敵だよ。




「こないだ真面目な顔してさ、『俺もフツーに恋愛とかしたいわ』なんて言い出したんだよね。理由を聞いたら、咲絢チャンみたいに一途に想うコっていいよな…だってさ」

「それ、いつの話?」


大地くんにもいつしかタメ口をたたいている私。


「この映画のキャストが発表された辺りだっけか。翔大となんかあった?」

「なーんにもない。月島くんとは友達だと思ってる」


ふーん、と興味なさそうだった大地くんが、急にニヤリと笑った。



「さっきのあの手を出してくれたとこさ、あーゆーこといつも彼氏にやってんの?」



……月島くんと同類だよね、どうせ大地くんも。


「……教えない」


だってまた何か言われそうで嫌だ。