高橋さんと仕事をするようになってから1年以上も経つけど、お互いにプライベートには干渉してない。


っていうか、私と恭哉のことなんか話した日にはすぐ別れさせられそうだから言ってないし、言う気もない。


それに私が学校でイジメられてたことも、それが桜小路さんの取り巻き達の仕業だってことも言ってない。


これは仕事に差し支えるかも知れないから言うべきなんだろうけど、こんな事で頭を下げるのは癪に障る。



だから、それも言う気はないけど、もしかしたらどこからかは漏れ聞いているのかも、だけど。



それにしても倉木さんと高橋さん、昔何があったんだろ……?




「お疲れ様でしたー」

「お疲れ様」



現場のスタッフさん達に挨拶をして、その日の仕事は終わった。


あとはホテルに戻るだけ…なんだけど、この時代劇用のロケ地は東北の僻地にあるもんだから、夜に遊ぶとこなんて全くない。


それにありがたくもないけど事務所が学校の授業に遅れないようにと、ここでも特別講師を頼んでいるから休む暇も遊ぶ暇もないし。



「お疲れ様。荷物はこれだけ?」


私の荷物を持ちながら高橋さんが聞いた。


「はい、そうです。そう言えば、今日で倉木さんが一旦現場を離れますよね?差し入れとかしなくて良かったですか?」



いつもだったらそういう事にも気が回るのにな、高橋さんは。




「……いいのよ。あなたは心配しないで頂戴」



切りつけるような高橋さんの口調にたじろいだ。

なんでそんな言い方するんだろう?



「……落ちていく 身を知りながら紅葉ばの 人なつかしく こがれこそすれ。そう倉木さんが高橋さんに伝えてくれって言ってました」


ちょっと高橋さんに意地悪したくなった。


どんな反応するんだろ?




「……咲絢。余計な詮索はしないでくれる?あなたは映画に専念して」


無表情…というか、わざわざ表情を消して、高橋さんは私に答える。


そこまで言われれば気になるじゃん!