それだけじゃない。


《家茂》役には、月島くんと組んでいる大地健之君。



幕末の偉人達の役にも錚々たる名前がずらりと並ぶ。



時代劇の大物俳優、ハリウッド俳優、歌舞伎役者、アイドルグループの女の子達まで。





それでも私がプレッシャーを感じるのは、桜小路さんの存在………だ。




「……桜小路公佳は共演者には煩いからな。気を付けろよ」



社長はそれだけを言うと、私達を下がらせた。



「なんで…?ダブルキャストなんですか?」




私には荷が重すぎる。



今読み上げられた《孤城落日》のスケジュール表や企画内容、それにざっくりとストーリーを説明してもらうと、まさに肩には重たい石が乗っかってるように感じた。



「……やりましょう、咲絢。光栄な仕事よ。チャンスに恵まれない人達もいるという事を忘れないで」


チャンスには違いない。




だけれど……。




「すみません、高橋さん。このお話の返事は、明日にして下さい。もう少し考えたいので……」



高橋さんは不服そうだったけど、今回のオファーには『攻めて行こう』といういつもの負けず魂が働かないんだ。





………恭哉に相談したら、恭哉はなんて言うのかな……?