桜色ノ恋謌



《shelly 》の撮影は驚くほどスムーズに進んだ。


まあ、私は今の《shelly 》の主流モデルではないから、数点撮ればいいだけなんだけど。



少し早めに昼食を摂り、スタジオを移動して、テレビ局に入る。



そして……。


私と高橋さんは《justice》の控え室の前に立っている。


……なんっで司会だからって、あいつに挨拶しに行かなきゃいけないのよ!


はらわたが煮えくり返るとはまさにこの事だね!



「いい?月島さんとあなたはクラスメイトだけど、ちゃんと挨拶をして頂戴?」

「はい、ワカリマシタ」


ふて腐れたいのは山々だけど、ここは堪えて営業用スマイルだっ……。


高橋さんがドアをノックすると、マネージャーらしい人がドアを開けた。



だらけた様子で椅子に座る二人組。

その中の一人は私の天敵。……あーもう嫌だ。



学校以外でまたこいつと一緒に仕事するなんて。



「おはようございます。如月です。今日は宜しくお願い致します」


高橋さんに言われて私も頭を下げた。


「あーヨロシクー。翔大が随分咲絢ちゃんのコト気に入ってるみたいなんだよねー。今日はそこら辺突っ込んでもいーい?」


《Justice》の片割れの大地健之(だいち たけし)くんが言った。


さすが、月島くんと組んでるだけはあって、似たとこあるらしいな。


「申し訳ありませんが、台本通りにお手柔らかにお願いしますね」


高橋さんはフフっと鼻で笑って大地くんをあしらった。



高橋さん、カッコいい !!



「では後ほど」


そう言って私達は控え室から廊下に出た。