その日の仕事を消化し終わって車に乗り込むと、高橋さんの携帯に着信が入った。



「……え?ええ、……はい。お世話になっております。……ちょっとお待ち下さい」



高橋さんはスケジュール帳を取り出して日付をチェックした。


仕事のオファーかな?




「それは大変ありがたいです。ですが、映画の制作やスポンサーとの兼ね合いは?一応宣伝……ああ、そうですね。同じ局ですね。はい、こちらとしては大丈夫です。ええ、ありがとうございます……では、失礼致します……」


「……高橋さん……?」


高橋さんは携帯を置き、スケジュール帳に何かを書き込んだ。


そして私の方を向いて、「仕事よ」とさらっと言った。


「どんな仕事ですか?」


返ってきた答えはとんでもないもの。


「《Justice》の二人が司会をやっているバラエティー番組。急過ぎる気もするけど。わざわざご指名頂いたの。それに映画の宣伝もできるから……」


高橋さんがそこまで言うと、再び携帯が鳴り響いた。



「なんだって言うのかしら……はい、あら。どうしたの?ええっ !? 陽菜乃が?ちょっと待って、さっき別のが入ったばかりなのよ……」



今の声、聞き間違いじゃないよね?



高橋さんの通話の相手は……昂、くん……?