彼女の香澄(かすみ)を家まで送り届けて帰宅すると、おふくろが鼻唄まじりに台所で何やら大量に料理を作っていたから驚いた。


唐揚げ2キロ分ってこれ誰が食うんだよ?



でもおふくろの意識が俺に向いていない事だけには感謝する。

俺に彼女ができてからは色々と詮索してきてウザいことこの上ない。


煩く聞かれる前に二階の自分の部屋に隠れようとしたら、運悪くおふくろにバレてしまった。



「恭哉?あんた帰ってたの?」



うぅとか、まぁとか曖昧な返事を返したが、なぜか上機嫌なおふくろの耳には俺の返事は聞こえていない様子。


「なんかあったの?やたらご馳走あんだけど」


床がギシギシ鳴る台所に行って、さりげなく探りを入れてみた。


ついでに唐揚げを一つ摘まんで食ったけど味が薄いじゃん。これケチャップ付けないと食えねぇよ。



「そうそう、ちょっと聞いてよ!隣の咲絢ちゃんがね、有名な雑誌のモデルのオーディションに優勝したんだって!今夜はそのお祝いにお呼ばれしたから手料理でも持っていこうかな、なんて。恭哉知ってる?《Shelly 》っていうティーンズ雑誌だってよ?」


Shelly 。聞いたことあるかも。