「……今日はお祝いにしよっか。咲絢の新しい門出に、ね」



車で帰っていった社長達を見送ったあと、お母さんが小さな笑顔を見せてみんなに言った。



「マジで?俺寿司がいい!」


和生は相変わらずゲーム機を片手に無邪気にはしゃいでいる。


「隣の梶さん家も呼んでな。寿司は出前でいいだろ?」

「お寿司は出前で良いけど、梶さん達を呼ぶなら他にも料理を作るわよ」

「お寿司だけでいいよ、お母さん!そんな事されたらあたし……」



だってお母さんは月刊童話雑誌の締め切り前で忙しいのに。



「咲絢のため、でしょ。これから先楽しい事だけじゃなくて嫌な事だってあるんだから。少しでも応援したいんだよ」


あたしの頭をぽんぽんと軽く叩いてお母さんはキッチンに向かった。



お母さんの思いやりが嬉しくて、あたしはめったにやらない手伝いをするためにその後を追う。




応援ありがとう、お母さん。



仕事を許可してくれてありがとう、お父さん。





来週からあたし、頑張るね。