桜色ノ恋謌

「お取り込み中だったぁ?」

お母さんはニヤニヤ。



「さあねぇ。意外に恭哉はヘタレだから」

おばさんもニタニタ。



「……まだ早いだろ!」

説教したくて待ち構えていたお父さん。



「お前、人気女優を食わせるだけの甲斐性あるのか?」

心配げな梶さんのおじさん。




……みんな、分かってて邪魔したのね。



「……くそ……」


恭哉は腹立ち紛れにチューハイを煽った。




「咲絢、これ」

チューハイの缶を置いて、恭哉があたしにクリスマスカラーの小箱を渡してくれた。


「……クリスマスプレゼント」

「あ…ありがとう!開けていい?」



無言で頷いた恭哉の前で箱を開けた。


「……時計……」




シックな懐中時計。


「……お揃い。咲絢のと、俺の」

「嬉しい。ちゃんと大事にする!」



プレゼントが入った箱を胸に抱えて、あたしはにこおっと笑った。


「あたしからもあるよ。はい!」


プレゼントって、開けてもらうまでが緊張するね。


「また『ひょうたん』とか言うなよ」

「言わないし!」


まだ根に持ってたのか。


「お。なにこれ?」


忙しいからネット通販でしか買えなかったんだけど。


「ガラスの置物。中には天使像が入ってるの。あたしも、お揃いにしたよ」

「……そっか。ありがとな」



大人達の目を盗んで、こっそり交わされた秘密のキス。



お邪魔が入ったのは残念だったけど、恭哉って名前で呼べるようになっただけでも嬉しい。


『恭哉』の彼女にレベルアップ、ってことなのかな?