桜色ノ恋謌

「DVD借りて来たんだけどさー。洋画と邦画、どっち観る?」


ジュースとグラスをキッチンから持ってきたあたしに、恭哉くんが聞いてくる。


「んー?邦画は何?」

「新作で人気らしかった『なみこい』借りて来た」


あ…。それ、手塚陽菜乃ちゃんが主役の映画だっけ?


「……『なみこい』で、いいよ」


あたしがそのDVDを選んだのは、何故なのかは自分でもよく分からない。



陽菜乃ちゃんに対しての嫉妬なのかも知れないけど。



小説が原作のその映画は、いたって普通の恋愛ものみたいだった。


なんと言うか……。面白くないな。


あたしが陽菜乃ちゃんに嫉妬…してるからなのかな?



まだ3分の1も観ていないのに、あたしは飽きてきた。



「……なんかつまんねぇな」


恭哉くんまでがそんな事を言うから、あたしは態度に出てたのかと少しだけ焦る。



「手塚陽菜乃って、こんなに演技下手くそだったっけ?前はもっと良かったよな?」

「そうなの?陽菜乃ちゃんのはあんまり観てないから知らないけど……」

「……うん、やっぱつまんねぇ」



リモコンをぽいっと投げた恭哉くんがあたしの後ろに座り直した。