恭哉くんも宴会から逃げたかったのか、あたしを浜辺に誘い出してきた。




いつもだったら花火に飛び付くとこだけど……。



「うー……」



ついつい警戒して、うなり声を漏らしてしまう。



だって、恭哉くんと二人きり……でしょ?



そしたら昼間みたいに、また雰囲気に流されてしまうかも。



「何で猫みたいに警戒してんだよ。何もしねーよ」

「……ほんとに?」

「……たぶ…いや、絶対にしない」

「今、『多分』って言いかけたよね !?」

「信じろって。何もしねーから!」


そこまで必死に言われれば、ねぇ……。


「分かった。浴衣を着替えてくるね」

「おー」



あたしは着ていた旅館の浴衣を着替えるために、一旦部屋まで戻った。



私服のワンピースを肩にかけたら、肩紐を何かに引っ掛けた。



……昂くんがくれた、ネックレス……。



まるで昂くんに「忘れるなよ」と言われているようで、後ろめたくなった。



昂くんはあたしのところに戻って来るからって言ってくれた。


それがいつになるのかは、まだ分からない。

何でだろう?



昂くんと別れたのはたった数ヵ月前の事なのに、今はその存在を遠くに感じている。


信じて待っていても良いのかな?


昂くんの気持ちが離れていくって事は無いのかな?


あたしの近くに今は恭哉くんがいるように、昂くんにもそういう人が、いたりしないかな?