桜色ノ恋謌

だけど、揺らいでしまったのは私の心?


「でも……」

「少なくとも今は、そいつの事を考えんな。俺だけ見てろ」

「だって」

「でももだってもねーよ。お前を守れるのは俺だけだって、肝に命じとけ。昔からそうだったんだから」




恭哉くんが、あたしの耳元で囁いた。


……耳にかかる息が艶かしい。



「お客さん、そろそろ着きますよ」


案内人さんに言われて我に返った。




恭哉くんの息遣いがまだ耳元に残っている。

顔が火照ってて、自分でもどうしたいのかが分からない。


―――あたしはどっちが好き
……なんだろう?―――