桜色ノ恋謌


恭哉くんは頬を引っ張っていた手を引っ込めて、今度はあたしの両手を力一杯握りしめた。


……超痛い。



「今はって事は、前はいたわけ?そういう奴」



恭哉くんの真剣な眼差しは、あたしが答えを拒否することを赦してないみたいだ。



「……いた。今は離れてるけど……」

「それって、もしかして前のマネージャー?」

恭哉くんの問いにあたしはこくりと頷いた。


だって昂くんがあたしに「待ってて」って言ったんだもん。



だから、あたしは昂くんの事を……。



「……まあ、予想してなかったわけじゃないけど。にしても、ちょっとキツいな……」


恭哉くんがあたしの腰を掴んで引き寄せる。



二人の体はかなり密着していて、お互いにかかる息遣いにあたしは戸惑った。



「きょ…やくん!恥ずかしいよ」


クルーザーの中には他の人達もいるのに!



「……駄目。泣いたお前を笑わせるのは、昔から俺の役目なの。他の奴には渡さない」



え?あれ?恭哉くんって、こんなに強引だったっけ?