「クルージング行かね?ていうか、予約はしといたんだけど」
「クルージング行きたい!」
雑貨屋さんで買った荷物を置きに一旦旅館(ホテルじゃないよ。旅館だよ)に戻ったら、恭哉くんがそんな事を言い出した。
「3時の最終便なんだけどさ。ぶらぶら歩いて行ってみるか?」
「うん行く」
恭哉くんは、ここでも手を繋いできた。
だから、あんまり近づき過ぎないでー!
「どした?」
「なんでもない!」
恭哉くんはフッて笑ったけど、分かっててやってるんじゃないのかな。
あたしがどきどきしてること。
この数年であたしも変わったかも知れないけど、恭哉くんだって変わってしまったよね。
小さい頃には戻れない。
あたしの世界はあの頃より広がった。
それでも、恭哉くんが隣にいてくれたら、あたしはその手に甘えてしまうんだ。
それはこの前の事で、よく分かった。
イジメられた時やブログに中傷された時に、もし昂くんがまだあたしのマネージャーをしていたら、どうなっていたんだろう………?
それを考えると、出口がない迷路に迷いこんだように思えてしまう。


