「40-0!」
審判の声が響き渡る。途端に場内はわぁっ!と叫び声があがる。
テニスコートには大柄な女子と150cm位の女の子が立っている。

「やったぁ!まおみ!優勝よ!」
部活の仲間が駆け寄る。
小さな女の子は親指を立ててにかっと笑った。


大会会場をあとにした女子達はまおみを中心にわいわいと歩いている。
「本当にまおみって強いよねぇ」
「うん、パワーは男子に匹敵するよねぇ」
「現にうちの男子にも勝っちゃうし」
「ほんとこの小さな体で・・・」
とまおみの頭をなでる。
途端にまおみが怒鳴る。
「ちょっと!子供をなでるみたいにしないでって言ってるでしょ!」
一緒に歩いていた3人はどっと笑う。

まおみは身長は148cm。細い体からは信じられないパワーで高校テニス界をひっぱっている女の子だ。
最初、まおみの小ささに相手がなめてかかるのだ。
でも、まおみからのサービスエースやリターンエースで全く歯が立たなくて試合は終わってしまうのが多かった。
まおみの球は重くてラケットが持って行かれてしまうようなもので、テニス界ではいまや、全国でまおみに勝てる者はいなかった。

そして身長にぴったりの可愛いという表現がぴったりの外見。ストレートの髪の毛は肩より少し長めで友達からいじられるのが日課だった。
まおみもそれはすでに諦めているのだが、身長のことだけは、どうしてもムキになって怒ってしまう。
友人たちはわざと身長のことを言ってまおみを怒らせて楽しんでいるのだ。それがわかっていても怒ってしまうのがまおみの悩みだった。