毒舌に惑わされて

「何もない」


「じゃあ、何で泊めたの?」


「タクシーに乗ったら、莉乃が寝ちゃって起きなくて、家が分からなかったから、仕方なく俺のとこに運んで泊めた」


仕方なくを強調して、あの夜の状況を説明した。目が覚めたら、不機嫌な顔で私を見る聖也がいた。

あの日を思い出す。


「そういえばさー、裸だったよね?私」


「裸~?」


葉月とマスターが衝撃なことを聞いたと仲良く驚く。


「余計なことを思い出すなよ」


「ちょっと、ちょっと、聖也! 何で莉乃を裸にしたのよ」


好奇心旺盛の葉月はもっと詳しく聞こうとする。


「してない」


「えっ?莉乃が自分で脱いだの?」


聖也ではなければ、私が自分で脱いだことになる。記憶がないって、恐ろしい…。

酔っていたとはいえ、男の部屋で脱ぐなんて危機感のない私はバカだ。


「すみません。覚えてないです」


30年生きてきて、こんな恥ずかしい思いをしたのは初めてだ。