毒舌に惑わされて

仕事中のお父さんは優しく微笑んで、厨房に戻っていく。大倉くんは私が緊張して食べれなくなったら困ると思い、敢えて話さなかったのだと言う。

そんな気遣いをしてくれる大倉くんは優しいな。


「大倉くんはお父さんと同じシェフになろうとは思わなかったの?」


「小さい頃は親父みたいになりたいと思っていたけど、俺には向いてないと分かってね」


「向いてないって、どうして?」


大倉くんは離れたところに視線を移してから、返事をした。


「何ていうのかな。料理のセンスがないんだよね。だから、違う道を選んだんだ」


「そう。大倉くんって、何している人?」


「なんだと思う?」


「サラリーマン?」


ありきたりかもしれないけど、普通のサラリーマンに見えた。だって、初めて会った時にスーツ姿だったし、良く似合っていたから。


「実は中学の教師をやっています」


「えっ?先生なの?」


先生だなんて、全然イメージになかった。