「大倉さん、まだ莉乃を狙ってます？」


大倉くんの言葉に反応した聖也の顔が、さっきまでの和やかな顔から険しい顔に変わっていた。


「俺は振られたら、ちゃんと諦めるよ。聖也のほうが諦め悪いだろ？」


「俺のことはどうでもいいです」


「そう？じゃあ、俺は帰るよ。莉乃ちゃん、また会ったときは飲もうね」


大倉くんは私の肩を叩いて、ご機嫌に帰っていった。

私もそろそろ帰ろうかと立ち上がって、ジャケットを羽織った。


「莉乃ちゃん、帰るの？」


「うん。終電に間に合うから」


「俺も帰る。莉乃、行くぞ」


「えっ？何で？」


「終電なんて酔っ払いがたくさんいて、危険だろ？それにイチャイチャしたバカップルもいっぱいいるから、１人が寂しくなるだろ？」


酔っ払いから守ってくれるのは分かるけど、バカップルからも？

よく分からない申し出にもやもやしながら、聖也と電車に乗った。

週末の終電は混んでいる。

酔っているサラリーマンがあちこちにいて、アルコールの匂いが充満していた。