毒舌に惑わされて

自分の降りるべき駅に着いたので、バッグを握り締め直して、ドアに体を向けた時、後ろから肩を掴まれた。


「聖也」


「俺のとこに来いって言ったのを忘れたのか?相変わらず物覚えが悪いな」


「いつからいたの?」


「莉乃があいつと別れた時からいたけど」


全然気付かなかった。ドアはいつの間にか閉まっていて、再び電車は動いていた。


「降りるぞ」


2つ先の駅で降りて、聖也のマンションまで歩く。


「早く入って、ドアを閉めろよ」


先に入っていく聖也をただ見ていた私は声を掛けられて今いる場所、今の状況にやっと目を向ける。

聖也の部屋のリビングに入って、床に座る。なんか疲れた。


「で、何を言われた?」


スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外した聖也がYシャツの袖を捲りながら聞く。


「何って、別に何も」


「そんなわけないだろ? ずっとそんな間抜けな顔していてさ」


「どうせ間抜けな顔よ」


だったら、何も気にかけないでよ。


「莉乃の顔をどうこう言っているんじゃない。何を言われたか聞いているだけだ。言ってみろよ。話すだけでもスッキリするだろ?聞いてやるから」