毒舌に惑わされて

「お腹いっぱい。美味しかった」


「今日もいっぱい食べましたね。安藤さん、見ていて気持ち良くなるくらい食べるから、俺も嬉しくなりますよ」


焼き鳥と一緒にビールも飲んだ。話したことは新プロジェクトのことが主で、興味深い内容で盛り上がった。

聖也と揉めたことはすっかり頭の隅のほうに行っていた。

焼き鳥屋を出たあと、駅の近くにあるカフェに入る。

野村くんの顔が真剣になった。私も真剣に聞かなくてはと、真っ直ぐ目を合わせた。


「安藤さん、ごめんなさい」


「えっ? 顔を上げて。ちゃんと話してくれるんでしょ?」


頭を下げる野村くんに私は少し動揺した。


「はい。ちゃんと話します」


頭を上げて、しっかり私の目を見て、ゆっくりと昨日聖也が見たという女性のことを話し始めた。



野村くんと別れて、私は電車に乗った。脱力感の残る体が電車の動きに合わせて揺れる。


「おい。まだ降りるのは早いぞ」