毒舌に惑わされて

でも、私も野村くんと同じことをした。付き合ってもいない聖也と寝た。

だから、私は野村くんの元に行く。


「あたしは別に過ぎたことなんて気にしない。これからのことの方が大事だから。今はやっぱり野村くんと向き合いたい。だから、離してくれない?あたしのために止めてくれたなら、ありがとう。自分でちゃんと考えるから、大丈夫だよ」


聖也の手が緩んだので、私はそっと離れて、聖也を正面から見るように向きを変えた。

目を合わせる聖也は納得出来ないという顔をしている。


「行くね。じゃ…」


「絶対、うちに来いよ」


背後から聞こえた声には返事をしないで、野村くんと外へ出た。

私は頭の中を焼き鳥だけにした。余計なことは考えない。まずはお腹を膨らまそう。


「安藤さん、あとで話があります。聞いてくれますか?」


「うん。でも、焼き鳥を食べてからね」


「分かってますって。いっぱい食べましょうね」


私たちは笑いながら、焼き鳥屋の暖簾をくぐった。