毒舌に惑わされて

聖也は言うだけ言って、カウンター席に行った。

絶対に行かない!行かなければいけない理由はないはずだ。


「安藤さん、お待たせしました」


「野村くん、お疲れ様ー」


野村くんの後ろにカウンター席が見える。チラッとこっちを見た聖也と目が合う。

私は慌てて、目を逸らして野村くんを見る。


「野村くん、せっかく来たところで悪いんだけど、他の店に行かない?」


聖也が見える場所に居たくない。


「俺はどこでもいいですけど、ここは安藤さんのお気に入りなのに、いいんですか?」


「うん。この前に食べた焼き鳥屋さんに行きたくなっちゃって」


「あそこ、気に入ってましたものね。じゃあ、移動しましょうか」


正直、『fantasy』以外ならどこでも良かった。ここも聖也がいなければ、オーケーなんだけど。

聖也はマスターと談笑していた。珍しく笑い声が聞こえる。

気付かれないようにそっと出たいけど、会計をしなければならないから、そうはいかない。