毒舌に惑わされて

聖也の欲しい本は入り口付近にあったベストセラーが並ぶ中にあった。

素早く手に取ると私に体を向ける。


「莉乃の見たいのはどれ?」


「えっ? あ、こっちにあると思うんだけど」


私はファッション誌が並ぶ棚に行く。


「これだ。ちょっと見てるから、聖也は会計してきていいよ」


私がお気に入りのファッション誌に手を伸ばしかけたら、聖也が先に手に取った。


「じゃ、買ってくる」


「えっ?」


二冊の本を持って、会計に行った。


「ほら、莉乃が持てよ」


「買って…くれたの?ありがとう…」


会計を終えて、二冊の本が入った袋を私に差し出す。

思いがけない聖也の行動に唖然としながら、受け取った。

こういう男らしい優しさに女は落ちやすい。私も例外ではないけど、聖也に落ちたくない。

気持ちを抑えるよう胸に手を当てて、深呼吸。こんなことに惑わされない。


葉月の家に着くと、聖也は買い物袋を葉月に渡して、庭に出た。