「おばさん これって」

千尋が声を出した。


「ん?」

近づいてきて 花の母親がその絵本を見て笑った。


「覚えてる?」



「あ はい 覚えてます」


千尋が絵本をひっくり返して
悲しい笑顔で見ているのを アタシも覗き込む



チッチ&ハナ


チッチ・・・・・


ハナ・・・・・・



「花の遺品の整理をしていたら これが出てきてね
おとうさんと 製本にしてもらおうって・・・・
世界に一冊だけの絵本よ」


「なつかしいな・・・・・花が夢中になって書いてたから
俺も手伝ったんです・・・・色塗ったり・・・・
物語一緒に考えたり・・・・・・」


「こういうコーナーに自分の書いた絵本を
置きたいって言ってたでしょ。少しだけ夢が叶ったでしょ?」


「うわ・・・・ちょっといいか・・・」

千尋が座ってしまったので
アタシも向かい側に座った。