「お前さ、あいつのこと好きなの?」
「ち、違っ…」
「顔、触らせようとしてたのに?」
「あれは、ただ口に入った髪を取ってくれようとしただけでっ!」
「そんな風には見えなかったけど。少なくとも、向こうに下心はあったはずだ」
「そんな…」
「ったく、もう少し警戒しろよ」
卓人さんはそう言って、呆れたと言わんばかりに溜息を吐いた。
「俺が行かなかったら、お前何されてたかわかってんのかよ?嫌がったり出来ただろ?思わせぶりなことしてるとーー…」
「…ーー卓人さんはどうなんですか?」
何よ…何でここまで言われなきゃいけないの…?
「は?」
「卓人さんだって、澤村さんのこと抱き締めてたじゃないですか⁉︎ずっと側にいるって、一人にしないって言ったんですよね⁉︎」
「お前、何言って…」
「澤村さんっていう彼女がいながら、こうやって他の女に期待をさせるようなことする卓人さんの方が思わせぶりで最低です!」
悔しくて、悲しくて、涙が込み上げてくる。
卓人さんの一番になれないなら、こんな風に連れ去らないでよ!
せっかく諦めようって決めたのに、人の気持ちを掻き乱さないでよ…

