「待って!卓人、待ってってば‼︎」
ちょうど自販機の前で、穂花は俺の腕を掴んだ。
「何?」
「…私、まだ帰りたくない」
「……」
「一人は嫌…怖いの…怖くて怖くて堪らないのよ」
そう言って、穂花は俺の腕をギュッと握り締めた。
「じゃあ、なんで浮気なんてしたんだよ。遣都さんという人がいながら…」
遣都さんのどこに不満があったんだ?
あんなに優しくて、仕事も出来て、彼女想いで。
男の俺から見ても、遣都さんは男としても人間としてもかっこいい。
「…寂しかったの。遣都は昔から仕事ばかりで…」
「それで3年前、俺にも声掛けたんだ?寂しさを紛らわすために」
「…違うわ!」
「…どうだかな。まぁ、今となってはもう、どうだっていいことだけど」
俺の中で、穂花とのことはもう過去だから。
「もういいだろ…俺は穂花に何もしてやれない。そろそろ一人で歩けるようになれよ」
誰かと一緒にいないと、寂しい、怖いだなんて言ってたら、いざという時に困るのは穂花自身。
人は一人では生きていけないけれど、時には一人で頑張らなきゃいけない時だってある。
いつまでも、甘えてなんていられないんだ。

