8月末日、今日で平井に勉強を教えるのも終わる。
バイトが休みの時も、教えるために店に来てたけど、もうそんな面倒なこともしなくて良くなるんだ。
なのに、嬉しいよりも、少し残念な気持ちの方が上回っていた。
いつから俺は、こんなにも平井を好きになっていたんだろう。
平井がバイトに入って来た時は、ただ面倒くさくて仕方なかったのにな…
いつの間にか、俺の中に住み着いてたんだ。
だけど、平井は最初っから俺なんか見てなかった。
店を飛び出した遣都さんを追い掛けて行ったあいつの背中が、俺に現実を見せてくれたんだ。
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「卓人?」
俺は、穂花の声で我に返った。
そうだ、今はとりあえず穂花を帰そう。
これ以上一緒にいても、俺にはこいつにしてやれることは何もない。
「そろそろ帰るぞ。駅まで送る」
俺はそう言って、テラスを降りた。

