オープン後、瞬く間に店は大繁盛して、行列が出来るほどの人気店になった。
ハルさんのラテアートや並木さんのパンケーキが雑誌に取り上げられたからだ。
店は嬉しい悲鳴を上げているが、俺のバイト生活はどんどん苦痛になっていった。
客が女だらけになり、毎日声を掛けられるようになった。
すぐに泣く女スタッフも、下心丸出しで節操のない客もうざい。
寒気がする。
俺はいつの間にか生粋の女嫌いになっていた。
そんなある日、やっと女スタッフがいなくなったと思ったのに、ハルさんの従姉妹がスタッフとして入ってきた。
ハルさんは俺に仕事を教えろとか、あり得ない指示を出してくる。
見るからにすぐ泣きそうな高校生のガキ。
ハルさんも柚姫柚姫ってうるさいし、正直めんどくせぇ。
どうせ、すぐ辞めるだろう。
そう思ってた、なのに…
平井は真面目で、一生懸命で、俺がどんなにきつく言っても睨んでも、休むことも泣くこともなかった。
曲がったことが嫌いで、根性があって。
それでいて、純粋。
なんだ、こいつ。
ガキのくせに、結構使えんじゃん。
この時、平井に対して、この程度にしか思ってなかった。

