大学入学後、地元のカフェのオープニングスタッフの募集を見つけた。
場所はメインストリートではなく、路地を入ったとこの閑静な住宅地。
珈琲は好きだし、ここなら静かに働けると思い、迷うことなく応募した。
オープンして二週間は客も疎らで、ゆったりとした時間だった。
まさにオアシスのような癒しの場所。
女性スタッフの猫撫で声が妙に気に障ったけど、店長も他の男性スタッフもいい奴らばかりだし、俺はこの場所が好きになった。
そんなある日。
『いらっしゃいませ』と客を出迎えると、俺は息をのんだ。
店に入ってきたのは、穂花の家から出てきた男ーー、
遣都さんだった。
遣都さんは、珈琲とパンケーキをひどく気に入った様子で、一口食べて『うわ!うまい!』と感嘆の声を漏らしていた。
その後、ハルさんとも意気投合して『また来ます』と爽やかな笑顔で店を後にした。

