家に着くと、階段を駆け上がり部屋に飛び込んだ。


「柚姫?どうかしたの?」


キッチンにいたお母さんが、階段の下から声をかけてくる。

私はそれに応えず、すぐにベッドに潜り込んだ。

頭まで布団を被り、枕に顔を埋める。

二人の抱き合うシーンと、穂花さんの不気味な笑みが頭の中から消えてくれない。


「っ、ゔ…ひっく……」


やだ…やだ、やだ…‼︎

思い出したくない。

消えてよ、私の中から全部…


とめどなく溢れ出る涙は、枕を濡らした。


ーーーーーーーーーー・・・・


ピンポーン。

家のチャイムと、お母さんが玄関を開ける音で目が覚めた。

どうやら泣き疲れて、いつの間にか眠っていたみたい。

瞼が異常に重い。

明日はきっと目が腫れて不細工な顔になってるんだろうな…

もともと、可愛くもなんともない平凡な顔だけど…

明日からテストのため、バイトは休み。

数日は卓人さんに会わなくてすむんだ…

寂しいような、ほっとするような、複雑な感じ。