オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜


『蒼君‼︎大丈夫⁉︎』


柚姫ちゃんは駆け寄ってくるなり、ハンカチを取り出して血を拭おうとする。


『ーー…放っとけよ』


何でだよ…

俺は柚姫ちゃんを傷付けたんだぞ?

バイトもサボりまくって皆に迷惑掛けて…

こんなどうしようもない俺を、なんで助けてくれるんだよ。

なんでそんな心配そうな顔をすんだよ…


『…怪我人を放っておけない』

『そういうの何て言うか知ってる?余計なお節介っつうんだよ』

『そう思うなら、私がお節介やかないようにしっかりしてよ…』


目に涙を溜めて、震える声の柚姫ちゃんは…

こんな俺に自分を大切にしてよ、と言う。

こんな俺の体も心も可哀想だ、と言う。

こんな俺の為に、純粋な涙を流してくれる。


初めてだった。

母さんが死んでから、俺を真剣に叱ってくれる人は。

じいちゃんばあちゃんも、父さんも、俺が不憫で仕方ないんだと思う。

俺の前で必死に明るく振舞っているけど、その笑顔はどこか悲しそうだったから。