『蒼君‼︎大丈夫⁉︎』
柚姫ちゃんは駆け寄ってくるなり、ハンカチを取り出して血を拭おうとする。
『ーー…放っとけよ』
何でだよ…
俺は柚姫ちゃんを傷付けたんだぞ?
バイトもサボりまくって皆に迷惑掛けて…
こんなどうしようもない俺を、なんで助けてくれるんだよ。
なんでそんな心配そうな顔をすんだよ…
『…怪我人を放っておけない』
『そういうの何て言うか知ってる?余計なお節介っつうんだよ』
『そう思うなら、私がお節介やかないようにしっかりしてよ…』
目に涙を溜めて、震える声の柚姫ちゃんは…
こんな俺に自分を大切にしてよ、と言う。
こんな俺の体も心も可哀想だ、と言う。
こんな俺の為に、純粋な涙を流してくれる。
初めてだった。
母さんが死んでから、俺を真剣に叱ってくれる人は。
じいちゃんばあちゃんも、父さんも、俺が不憫で仕方ないんだと思う。
俺の前で必死に明るく振舞っているけど、その笑顔はどこか悲しそうだったから。

