その手に一度視線を向けた後、荒木さんは再び口を開く。


「あたし、何のために生きてるんだろうってずっと考えてた……。今だってその答えはでないまま……」



「うん……」


「今は中学の時みたいないじめは受けてないけど、浅野さんが美奈子たちにいじめられ始めたでしょ……?あたしは浅野さんがいじめられてるのも嫌なの。本当はさ、みんなで仲良く過ごしたいんだよ……」


荒木さんの目からポロリとこぼれる涙。


涙を流す荒木さんの姿に胸が熱くなり、あたしもつられて涙を流す。


誰もいないシーンっと静まり返った保健室の中で向い合って涙を流すあたしと荒木さん。


言葉を交わさなくても気持ちは通じている気がした。



「荒木さんが生きてる意味は……ここにあるよ」


あたしは荒木さんの手を両手でギュッと握りしめた。


「あたしは……荒木さんに助けられたの。ギリギリのところにいたあたしを荒木さんは助けてくれた。あたしには、荒木さんが必要なの。それって、生きる意味じゃない……?」


あたしは荒木さんを必要としている。


ひとりぼっちだったあたしに手を差し伸べてくれた荒木さんを……――。


一人だと思っていても、誰かが自分を必要だと思ってくれているかもしれない。


あたしが荒木さんを必要だと思うように……――。