手で顔を守ろうとしたけれど、間に合わなかった。


心のどこかで、美奈子が自分に向かってバッグを投げつけるはずがないという気持ちがあったから。


バッグを掴み投げつけたとしても、あたしに当たらないようにしてくれると思っていた。


だって、少し前までは友達だったから。


少なくとも、あたしは友達だと思っていたから。


田中君のことで誤解が生じて、そこからおかしくなっていったあたしたちの関係。


あたしが耐えていればいつかはまた美奈子と笑って話せる日がくると思っていたのに。


それなのに……――。



「うわっ、汚っ!!」


どこからともなく聞こえてきたそんな声に耳を傾けていると、鼻の辺りがじんわりと温かくなった。