「はい。これで大丈夫」
「ありがとう」
お母さんにリビングで指の消毒をしてもらい、ふとキッチンの方へ視線を移すと、ダイニングテーブルの上に白い箱が置いてあった。
「あれ、何?」
「ケーキ。お友達の分も買ってきたんだけど、お母さんが帰ってくるのが遅かったみたいね。ごめんね、里桜」
「ううん。お母さんのせいじゃないよ。みんな、今日は用があったみたいで早く帰ったの」
笑顔を浮かべながらも申し訳なさそうに言うお母さんに胸が締め付けられる。
あたしは何食わぬ顔でお母さんにさらりとまた嘘を吐いた。
やっぱり、言えない。
お母さんを悲しませたくない。
惨めな思いをするのは、あたし一人で十分だ。
「お父さんが帰ってきたら、みんなでケーキ食べようか?ここのケーキ美味しいのよ」
「うん。そうしよう!!」
あたしはわざとはしゃぐような声を上げた。



